2021年(令和3年)度から、サービス付き高齢者向け住宅整備事業(補助金) が一部見直しされます。今回は、「サービス付き高齢者向け住宅」の補助金がどう変わるのか、概要をお伝えしていきます。
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2021年(令和3年)度サービス付き高齢者向け住宅整備事業(補助金)の概要を把握し、ポイントを整理していきましょう。
目次
1.サービス付き高齢者向け住宅の基礎知識
高齢者向け賃貸住宅のしくみとして、2011年10月の高齢者住まい法改正により、「サービス付き高齢者向け住宅」登録制度がスタートしました。この登録制度により、料金やサービス内容などの情報が事業者から開示され、ご本人やご家族の方が、ご本人に合った住まいを選択することができます。
|サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅とは、入居者に対して安否確認や生活相談サービスの提供が義務付けられたバリアフリー構造の賃貸住宅です。令和3年2月時点で約27万戸が登録されています。
ハード面 | ○床面積は原則25㎡以上 ※居間、食堂、台所そのほかの住宅の部分が高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合は18㎡以上 ○構造・設備が一定の基準を満たすこと ○バリアフリー構造であること(廊下幅、段差解消、手すり設置) |
サービス | ○必須サービス:安否確認サービス・生活相談サービス ※その他のサービスの例:食事の提供、清掃・洗濯等の家事援助 |
契約内容 | ○長期入院を理由に事業者から一方的に解約できないこととしているなど、居住の安定が図られた契約であること ○敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと 等 |
|スマートウェルネス住宅等推進事業とは
サービス付き高齢者向け住宅の管轄は国土交通省です。高齢者といえば厚生労働省と思われがちですが、住生活環境の充実を図るため、国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進事業として位置づけられています。
スマートウェルネス住宅等推進事業は、高齢者、障害者、子育て世帯等が安心して健康に暮らすことができる住環境を整備する事業です。下記の4つの事業があります。
- サービス付き高齢者向け住宅整備事業
- 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業
- 人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業
- 地域生活拠点型再開発事業
|有料老人ホームとは
サービス付き高齢者向け住宅とよく似た施設に「有料老人ホーム」があります。
サービス付き高齢者向け住宅において、必須の見守りサービスの他に、老人福祉法に基づく有料老人ホームの要件になっている「①食事の提供」「②介護の提供」「③家事の供与」「④健康管理の供与」のいずれかを実施している場合、そのサービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームに該当します。
有料老人ホームについては、別で解説しますが、サービス付き高齢者向け住宅事業では、サービス付き高齢者向け住宅として登録されている必要がありますのでご注意ください。
2.2021年(令和3年)サービス付き高齢者向け住宅整備事業(補助金)の概要
|サービス付き高齢者向け住宅整備事業とは
サービス付き高齢者向け住宅の供給促進のため、建設・改修費に対して、国が民間事業者・医療法人・社会福祉法人・NPO等に直接補助を行うものです。 これまでの令和2年度までであった補助期間が、5年間延長され、令和7年度までとなりました。
先ほど触れましたが、令和3年2月時点でサービス付き高齢者向け住宅は、約27万戸が登録されています。国土交通省は、2025年までに60万戸の整備を目標としており、引き続き整備を促進していくことが確認された形です。
それでは、2021年(令和3年)度の予算内容をみていきましょう。
令和3年度予算のポイント
- 事業期限の延長(令和7年度まで)
- 既存ストックの活用の推進
- ⇒既存ストックを改修する場合の補助限度額をひき上げ:180→195万円/戸
- ⇒新築(25㎡未満の住宅)の補助限度額をひき下げ:90→70万円/戸
- ⇒ 既設のサ高住でIoT技術を導入して非接触でのサービス提供を可能とする、改修事業への補助(補助率:1/3、補助限度額:10万円/戸)
- 防災の観点から新築の補助要件等を追加
|補助内容の概要
■サ高住
住宅 | 条件 | 補助率 | 限度額 | 補助対象 |
改修 | 1/3 | 195万円/戸 | ||
新築 | 床面積30㎡以上 (一定の整備完備) | 1/10 | 135万円/戸 | 住宅の全住戸数の2割を上限に適用 |
新築 | 床面積25㎡以上 | 1/10 | 120万円/戸 | |
新築 | 床面積25㎡未満 | 1/10 | 70万円/戸 |
○高齢者生活支援施設
高齢者生活支援施設 | 条件 | 補助率 | 限度額 | 補助対象 |
改修 | 1/3 | 1,000万円/施設 | ○ | |
新築 | 地域交流施設等 | 1/10 | 1,000万円/施設 | ○ |
近年の建築工事費の上昇を踏まえつつ、既存建物の活用による、サ高住整備が促進されます。
|IoT技術を導入した非接触サービスへの改修
既設のサ高住について、IoT技術を導入して非接触でのサービスを可能とする改修事業に対して新たに補助
既設サ高住 | 条件 | 補助率 | 限度額 | 補助対象 |
既設改修 | 1/3 | 10万円/戸 | 既設サ高住のIoT導入に対する補助 |
2021年(令和3年)度の新たな目玉です。ポストコロナとなる2021年以降の新たな日常やスタッフ人材不足に対応するための補助メニューとなります。
非接触による状況把握サービスの実施のための、設置工事をともなう、機器導入が想定されています。たとえば、緊急通報システムや人感センサー等の見守りサポートも該当します。
※運営中のサ高住を対象としており、開設当初の補助実績が有っても改修補助の利用が可能です。
|防災の観点からの補助要件見直し
- 新築のサ高住について、土砂災害防止法の土砂災害特別警戒区域に立地するものは補助対象外へ。
- サ高住の災害時利用を推進するため、「地方公共団体からサ高住に対して、応急仮設住宅や福祉避難所としての利用について要請があったときは、協定締結等の協議に応じる。
- 地方公共団体と協議の上、要配慮者(原則としてサ高住入居資格を有する者)を受入れること」が補助要件となる。※運営上支障がある等の特段の事情がある場合を除く
|その他の要件
これまで、主な見直し内容を説明してきました。これ以外にも、補助を受けるための要件や審査等があります。
- 高齢者住まい法に基づくサ高住として10年以上登録すること
- 運営情報の提供を行うこと
- 入居者が、任意の事業者による介護サービスを利用できること
- 入居者からの家賃等の徴収方法が前払いによるものに限定されていないこと
- 市町村のまちづくり方針と整合していること
- サブリース契約についての運営事業者から補助事業者(オーナー)への説明状況の確認
- 申請時や事業中の定期報告における各時点で職員配置を確認
- 家賃設定、入居率等の確認
太字は、令和3年度から追加・見直しされた内容となります。新規で開設をお考えの方は、これら詳細の確認が必要です。
3.補助金以外の優遇措置
|税制
■サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制
固定資産税 | 5年間、税額について2/3を参酌して1/2以上5/6以下の範囲内において市町村が条例で定める割合を軽減 | 令和5年3月31日までに取得等した場合に適用 |
不動産取得税 | (家屋)課税標準から1,200万円控除/戸 (土地)家屋の床面積の2倍にあたる土地面積相当分の価格等を減額 | 令和5年3月31日までに取得等した場合に適用 |
|融資
■(独)住宅金融支援機構が実施
○サービス付き高齢者向け賃貸住宅融資
サービス付き高齢者向け住宅として登録を受ける賃貸住宅の建設・改良に必要な資金や、当該賃貸住宅とする中古住宅の購入に必要な資金を貸し付け
○住宅融資保険の対象とすることによる支援
民間金融機関が実施するサービス付き高齢者向け住宅の入居一時金に係るリバースモーゲージ型住宅ローン(死亡時一括償還型融資)に対して、住宅融資保険の対象とすることにより支援
サービス付き高齢者向け住宅は、今回述べたような国の施策が適用されます。これから、新たに計画される方は、計画するサービス付き高齢者向け住宅の建物が補助適用の対象となるかどうか、しっかりと確認してください。
4.まとめ
2021年(令和3年)サービス付き高齢者向け住宅整備事業(補助金)の内容を、お伝えしてきました。サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が安心して暮らせる場所として、重要な役割を果たしています。
その一方で入居者へのサービスの訴求やスタッフの確保といった課題に対して、入念なプランが必要不可欠です。そして、事業の展開に補助金や補助制度、税制優遇の活用を検討しましょう。
これからサービス付き高齢者向け住宅の開設をお考えの方、既に運用されている方へ、開設・登録の手続きや補助金の手続き、改修の手続きを代行・サポートさせていただきますのでお気軽にお問い合わせください。