緊急事態宣言の再発令により影響を受けた事業者へ一時支援金が支給されます。その中で証拠書類や給付額の算定等に関して9つの特例があります。今回は、一時支援金の特例についてお伝えしていきます。
- 一時支援金の特例とは?
- 一時支援金は2019年・2020年開業者も対象?
分かりづらい一時支援金の申請について特例の内容を把握し、スムーズに申請しましょう。
目次
1.一時支援金の特例とは…
一時支援金では、通常の給付要件では受給が難しい事業者向けに、3月19日より特例(証拠書類等及び給付額の算定等に関する特例)を用いる申請の受付が開始されました。
一時支援金特例には、9つの特例要件があり、適用となる対象者は、算定要件や必要書類が変わってきます。
特例による申請期間は、2021年3月19日~5月31日です。特例の適用対象となる可能性がありますので、特例の要件と自社(個人事業者)とを照らし合わせてご確認ください。
2.確定申告書類等に関する特例
申請に必要な書類として、2019年と2020年の確定申告書類の控えが必要となります。申請時添付すべき確定申告書類についての特例が下記となります。
- (個人)確定申告義務がない場合は、確定申告書を住民税の申告書類の控えで代替可能
- (法人)確定申告書が合理的な理由で提出できない場合は、確定申告書を税理士の署名がある事業収入を証明する書類で代替可能
なお、特例となる申請ではありませんが、主たる収入を雑所得や給与所得で確定申告したフリーランス含む個人事業者の方も対象となります。
対象:主たる収入が年間業務委託契約等となり、税務上、雑所得や給与所得で確定申告したフリーランス含む個人事業者
給付額:2019年または2020年の年間業務委託契約等収入…①基準月 - 2019年または2020年の月平均の業務委託契約等収入と比較して、業務委託契約等収入が50%以上減少した月の中から、任意に選択したひと月…②対象月
- ①基準月÷4…A
- ②対象月×3…B
- 給付額=A-B ※給付の上限は30万円となります。
非常に分かりづらいですが、対象は幅広いですので、ぜひ要件をご確認ください。
なお、主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告したフリーランス含む個人事業者については、「証拠書類等に関する特例」、「2019年・2020年 新規開業特例」、「罹災特例」に限り特例申請が可能となります。
3.2019年・2020年 新規開業特例
開業後、間もない中小法人やフリーランス含む個人事業者向けの特例です。
対象:2019年または2020年に開業した中小法人・フリーランス含む個人事業者
給付額:開業月の年間事業収入÷開業年の設立後月数×3ー 2021年対象月の月間事業収入×3
※開業日の属する月も、操業日数にかかわらず、1ヶ月とみなします。
例)2020年10月20日に開業した個人事業主
売上
- 【2020年】10月:5万円、11月:20万円、12月:20万円
- 【2021年】1月:10万円、2月6万円 ⇒2月が対象月
この場合の給付額
- (開業年の年間事業収入)45万円÷(開業年の設立後月数)3×3=45万円…①
- (2021年対象月の月間事業収入)6万円×3=18万円…②
- ①45万円-②18万円=27万円が給付金額となります。※個人事業者の場合、上限額は30万円
必要書類となる開業・廃業等届出書や事業開始等申告書が提出できない場合は、代替書類の提出が可能となる例外措置があります。
なお、緊急事態宣言発令後の2021年以降に開業した事業者に関する特例はありません。
4.法人成り特例
個人事業主から株式会社などの法人化した事業者向けの特例です。
対象:2021年以降に、事業収入を比較する2つの月の間に個人事業者から法人化した者
給付額:法人化前の2019年または2020年の1月~3月の事業収入ー法人化後の対象月の月間事業収入×3
5.事業承継特例
「事業承継を受けた」フリーランス含む個人事業者向けの特例です。
対象:2021年以降に、事業収入を比較する2つの月の間に事業の承継を受けた個人事業者等
給付額:事業を行っていた者の2019年または2020年の1月~3月の事業収入 ー 事業の承継を受けた者の対象月の月間事業収入×3
6.合併特例
吸収合併や新設合併などを行った事業者向けの特例です。
対象:事業収入を比較する2つの月の間に合併を行った中小法人等
給付額:合併前の各法人の2019年または2020年の1月~3月の事業収入の合計 ー 合併後の法人の対象月の月間事業収入×3
7.NPO法人・公益法人等特例
NPO法人や公益法人向けの特例です。
対象:特定非営利活動法人及び公益法人等 ⇒確定申告書の控えなどについて各種書類で代替可能
寄付金等を主な収入源とする特定非営利活動法人 ⇒追加の書類の提出により寄付金等を収入に含めて給付額を算定可能
8.季節性収入特例
夏と冬で売り上げが違うなど、月々の売り上げ変動が大きい事業者向けの特例です。
対象:月当たりの事業収入の変動が大きい中小法人等・個人事業者等
給付額:2019年または2020年の1月~3月の事業収入の合計(※)ー 2021年1月~3月の事業収入の合計
※2019年または2020年の1月~3月の合計事業収入は、年間事業収入の50%以上である必要はありません。また、確定申告を白色申告でした場合は、「2019年または2020年の年間事業収入÷4」となります。
なお、季節性収入特例については、給付額の算定に当たって本年3月までの事業収入を用いるため、同月の売上が確定する4月1日以降に申請ができるようになります。
9.連結納税特例
連結納税した法人向けの特例です。各法人で申請でき、確定申告書類は、グループ内訳を証明できれば申請可能となります。
対象:連結納税を行っている中小法人等
⇒それぞれの法人が給付要件を満たす場合、法人ごとに給付申請を行うことが可能。
⇒確定申告書の控えについては、連結法人税の個別帰属額等の届出書で代替可能。
10.罹災特例
罹災された事業者向けの特例です。
対象:2018年または2019年の罹災を証明する罹災証明書等を有する中小法人等・個人事業者等
給付額:罹災した年またはその前年の1月~3月の事業収入の合計ー 2021年対象月の月間事業収入×3
11.まとめ
一時支援金の特例について、お伝えしてきました。緊急事態宣言の再発令により影響を受けた法人やフリーランスを含む個人事業者の方は、登録確認機関による事前確認を無事に済ませ、スムーズな申請により、無事に給付金を受けられることを心より願っております。
当事務所は、登録確認機関として、事前確認の対応をはじめ、一時支援金に関するご相談もお承りしております。お気軽にお問い合わせください。