産業廃棄物収集運搬に必要な許可-許可要件と申請方法

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産業廃棄物を適正に処理するための事業として、産業廃棄物収集運搬業があります。それを行うための許認可が「産業廃棄物収集運搬許可」です。


  • 産業廃棄物とは?
  • 新たに産業廃棄物収集運搬の事業に参入したい!
  • いまの業務内容に産業廃棄物収集運搬許可は必要か?

今回は、産業廃棄物収集運搬業の許可をどうすれば取得できるか解説していきます。

1. 産業廃棄物とは

廃棄物を扱うための法律として「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」があります。廃棄物か有価物かの判断は、占有者の意思や取引価値等を総合的に勘案すべきものとされています。

この廃棄物処理法で「産業廃棄物」が定義されていますので、整理していきましょう。

|産業廃棄物と一般廃棄物

店舗や会社など営利を目的とするものや、学校や官公署など公共サービスを含めて、事業活動から出るすべてのごみは、事業系廃棄物となります。廃棄物処理法では、事業者は事業系廃棄物を自らの責任で処理しなければならないものと定めています。

この事業系廃棄物は、大きく分けて「産業廃棄物」と「事業系一般廃棄物」の2種類に分けられます。

廃棄物処理法第2条4

この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。

一 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物

二 (省略)

これで見ると、産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じたものの中でも、廃棄物処理法で規定されている20醜類となります。

つまり、事業活動に伴って生じたとしても、産業廃棄物に該当しないものは、一般(事業系)廃棄物となります。

主な事業系一般廃棄物としては、飲食店から排出される残飯類、オフィスから出るリサイクルできない紙くず、造園業から排出される枝や枯葉等があげられます。

産業廃棄物を保管している画像

2.産業廃棄物の種類と具体例

では、産業廃棄物として規定されている定義と具体例をみていきましょう。

種類具体例業種限定
燃え殻 石炭がら、廃活性炭、産業廃棄物の焼却残灰・炉内掃出物 など
汚泥 排水処理汚泥、製造工程で生じる泥状物、建設汚泥、下水道汚泥など
廃油 廃潤滑油、廃洗浄油、廃切削油、廃燃料油、廃溶剤、タールピッチ類など
廃酸 廃硫酸、廃塩酸などのすべての酸性廃液
廃アルカリ廃ソーダ液などのすべてのアルカリ性廃液
廃プラスチック類 合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくずなどの合成高分子系化合物
*紙くずPCBが塗布され又は染み込んだもの(全業種)・建設工事(工作物の新築、改築又は除去など)から発生したもの
・パルプ、紙又は紙加工品の製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から発生したもの
*木くずPCBが染み込んだもの(全業種)
・貨物の流通のために使用したパレット(パレットへの貨物の積付けのために使用したこん包用の木材を含む)
・建設工事(工作物の新築、改築又は除去など)から発生したもの
・木材又は木製品製造業、パルプ製造業、輸入木材卸売業から発生したもの
・物品賃貸業に係るもの(例:家具など)
*繊維くずPCBが染み込んだもの(全業種)・建設工事(工作物の新築、改築又は除去など)から発生したもの
・繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く)から発生したもの
*動植物性残さ特定業種のみ・食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業などで、原料として使用された動物性又は植物性の固形状の不要物
・発酵かす、パンくず、おから、コーヒーかす、その他の原料かす など
*動物系固形不要物特定業種のみと畜場で処分した獣畜、食鳥処理場で処理をした食鳥 など
ゴムくず 天然ゴムくず
金属くず 研磨くず、切削くず、金属スクラップ など
ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くずガラスくず、耐火レンガくず、陶磁器くず、セメント製造くず など
鉱さい 高炉、転炉、電気炉等のスラグ、キューポラのノロ、不良鉱石 など
がれき類 コンクリート破片(セメント、アスファルト)、レンガの破片 など
*動物のふん尿特定業種のみ畜産農業を営む過程で発生した動物のふん尿
*動物の死体特定業種のみ畜産農業を営む過程で発生した動物の死体
ばいじんばい煙発生施設において発生するばいじんで、集じん施設によって集められたもの
産業廃棄物を処分するために処理したもの産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記のそれぞれの産業廃棄物に該当しないもの
コンクリート固形化物、灰の溶融固化物 など

業種限定

上記※記載の種別は、事業によって発生した廃棄物であっても全てが産業廃棄物とされるのではなく、特定の事業から排出される廃棄物が産業廃棄物となります。

つまり、事業活動によって発生した廃棄物であっても、特定業種以外から発生した廃棄物は事業系一般廃棄物となり、産業廃棄物収集運搬業許可では収集運搬する事はできません。

|建設工事に伴う廃棄物

「建設廃棄物」とは、建設副産物のうち、廃棄物処理法第2条1項に規定する廃棄物に該当するものをいい、一般廃棄物と産業廃棄物の両方を含む概念です。

「建設副産物」とは、建設工事に伴い副次的に得られたすべての物品であり、その種類としては、「工事現場外に搬出される建設発生土」、「コンクリート塊」、「アスファルト・コンクリート塊」、「建設発生木材」、「建設汚泥」、「紙くず」、「金属くず」、「ガラスくず・コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたものを除く。)及び陶器くず」又はこれらのものが混合した「建設混合廃棄物」などがあります。

建設工事から発生する廃棄物の排出事業者は元請業者です。そのため、元請業者自らが廃棄物を処分場へ運搬する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可は不要ですが、自らが運搬しない場合は原則として許可を取得している収集運搬業者に委託しなければなりません。

3.廃棄物処理のながれ

排出

収集運搬 : 排出された場所から処分する場所へ運ぶ

中間処理 : 大きな廃棄物は小さく、有害な廃棄物は無害化する⇒焼却・破砕等

収集運搬

最終処分or再生 : 環境を損なわないように自然界へ戻す⇒埋立処分・海洋投入

4.産業廃棄物処理業の種類

○産業廃棄物処理業

➢産業廃棄物収集運搬業

  • 積替え・保管を含まない
  • 積替え・保管を含む

➢特別管理産業廃棄物収集運搬業

  • 積替え・保管を含まない
  • 積替え・保管を含む

➢産業廃棄物処分業

  • 中間処理業
  • 最終処分業

➢特別管理産業廃棄物処分業

  • 中間処理業
  • 最終処分業

 産業廃棄物収集運搬業許可とは、『産業廃棄物を他人から委託を受けて処理場等に収集運搬することを業とする』場合に必要な許可です。

積替えとは産業廃棄物をトラックからトラックに積み直すことを指し、保管は指定の場所で産業廃棄物を運搬するまでの間、保管することを指します。産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管を含む)を取得する場合には、適切な処分施設や保管場所、事業計画などの届け出が必要です。

5.産業廃棄物収集運搬許可をとるためには

産業廃棄物収集運搬許可をとるための要件には、大きく「人の要件」、「設備・施設」、「財務状況」に分かれます。

|人の要件

○講習を受けていること

産業廃棄物収集運搬業を行うには、産業廃棄物の適正な処理を行う為に必要な専門的知識及び技能を習得する為に『公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター』が実施する講習を受講している事が必要です。

収集運搬業に関する講習は、特別管理産業廃棄物を収集運搬するかによって講習内容が異なります。産業廃棄物の収集運搬過程の修了証では、特別管理産業廃棄物の許可申請は出来ません。

○欠格要件に該当しないこと

申請を受理した場合であっても、申請者や役員等、5%以上の株主等及び政令使用人が欠格要件に該当するときは、許可がとれません。

  • 成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
  • 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 一定の法令等(下記参照)に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 『一般廃棄物収集運搬・処分業の許可』『(特別管理)産業廃棄物収集運搬・処分業の許可』『浄化槽法第41条第2項による許可』のいずれかを取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
  • 法人で暴力団員などがその事業活動を支配するもの
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  • その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者

|設備・施設要件

収集運搬を行うにあたっては、飛散・流出および悪臭が漏れるおそれのない設備を有することが求められます。申請には車両や船舶の情報、容器が必要な場合は容器を用意する必要があります。

|経営基礎的要件

事業を的確にかつ継続して行うことのできる経理的基礎を有することが必要です。審査では財務状況がチェックされます。

財務状況が悪いと、経費節減のために廃棄物を適切に処理せず、不法投棄などの問題が出てくる可能性があるためです。

許可を取り、喜ぶ作業従業員

6.産業廃棄物収集運搬許可の申請方法

産業廃棄物収集運搬業許可の取得は、管轄の都道府県知事に申請をし、積み込み先と処分場が都道府県をまたぐ場合、それぞれの知事に申請が必要です。

|申請のながれ

  1. 講習会の受講
  2. 申請書の作成
  3. 申請日時の予約
  4. 申請
  5. 審査
  6. 許可証の交付

○ 例)岐阜県の場合:岐阜県内における産業廃棄物収集運搬業の許可を受けるパターンは主に次のとおりです。

パターン収集運搬する内容(岐阜市内)収集運搬する内容(岐阜県内)許可の取得先(岐阜市内)許可の取得先(岐阜県内)
岐阜市内で
積卸しのみ行う
岐阜県内で
収集運搬する
必ずしも
必要ではない
必要
岐阜市内で
積卸しのみ行う
必要
岐阜市内で
積替え保管も行う
岐阜県内で
収集運搬する
必要必要
岐阜市内で
積替え保管も行う
必要

産業廃棄物収集運搬許可の合理化がなされ、岐阜県知事の許可を受けた産業廃棄物収集運搬業者は、岐阜市長の許可を受けなくても、岐阜市内で他人の産業廃棄物を積卸しできます(パターン1)。ただし、積替え保管を行う場合は、岐阜市長の許可を受けなければなりません(パターン3および4)。

岐阜県知事の許可を受けていないと、岐阜市長の許可を受けていても、岐阜市外の岐阜県内で他人の産業廃棄物の収集運搬はできません。岐阜県知事の許可については、岐阜県ホームページ(産業廃棄物処理業許可申請書)をご覧ください。

岐阜県以外で他人の産業廃棄物を収集運搬する場合は、管轄する都道府県知事等の許可を受けなければなりません。詳しくは、管轄する都道府県等にお問い合わせください。 

|申請書類

  • 産業廃棄物収集運搬業許可申請書
  • 事業計画の概要
  • 運搬車両の写真
  • 運搬容器等の写真
  • 事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法 資産に関する調書
  • 誓約書
  • 政令使用人に関する証明書
  • 経理的基礎を有することの説明書
  • 最新の定款の写し
  • 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
  • 住民票抄本
  • 成年被後見人等に該当しない旨の登記事項証明書等
  • 政令使用人に関する証明書(当該使用人がいる場合)
  • 申請者の許可証の写し
  • 法人税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分)
  • 所得税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分)
  • 経理的基礎を有することの説明書及び記載者の資格証明書、又は返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類

申請に必要な書類は個人と法人で、また都道府県ごとに異なることがあるため、申請の準備をする前に確認しましょう。

7.まとめ

産業廃棄物業務の解説として、産業廃棄物収集運搬許可についてお伝えしてきました。新たに産業廃棄物事業への参入をお考えの方や、いまの業務での法令遵守の観点から、情報収集や許可取得に向けた取り組みが必要です。

また、2021年は、補助金の内容が非常に豊富です。新たな事業展開時は、補助金を使うチャンスですので上手に補助金を活用していきましょう。

2021年(令和3年)活用できる補助金のまとめはこちらから!

事業再構築時に必要となる許認可の解説はこちらから!

新たに許認可の取得をお考えの方へ、申請が分かりづらい場合には、申請を行政書士が代行サポートさせていただきますのでお気軽にお問い合わせください。

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