「NPO法人…」よく耳にするけど、実際はよくわからない方も多いのではないでしょうか。よくわからない法人だからこそ、さまざまな誤解や憶測があるのも事実です。
今回は、NPO法人はどういう法人なのか、要件や設立までの流れをお伝えしていきます。
- NPO法人はボランティア?
- 新たな事業をNPO法人として行いたいけど何から始めれば良いのかわからない。
- そもそも、自分たちはNPO法人をつくれるの?
これからNPO法人を設立される方はもちろん、その他の法人と迷われている方にも、NPO法人の特性を理解し、やろうとしている事業に合うかチェックしてみましょう!
1.NPO法人とは
NPOとNPO法人
「NPO」とは、Non-Profit Organization の頭文字の略です。直訳すると「非営利組織」になります。広義のNPOとして、自治会やボランティア団体など、非営利な団体組織が含まれます。
一方、「NPO法人」は、NPOの中でも「特定非営利活動促進法(NPO法)」に基づき認証を受けた団体です。つまり、「NPO法人」になるためには、所轄庁から認証を受けて法人格を取得する必要があります。
- NPO(Non-Profit Organization) ⇒ 非営利組織
- NPO法人 ⇒ 特定非営利活動促進法(NPO法)に基づき認証
特定非営利活動とは
では、「特定非営利活動」とはいったい何でしょうか。
特定非営利活動
不特定多数のものの利益の増進に貢献することを目的とし、NPO法で掲げられる20の活動内容のいずれかに該当する活動
NPO法の20の活動内容
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
20項目のうち、1つでも該当していれば、かまいません。NPO法人の定款には、20項目のどの活動を行うのかを記載します。
非営利とは
特定「非営利」活動法人というと、利益を出してはいけない、ボランティアというイメージを持たれている方もいるでしょう。NPO法人はモノを売ったり、儲けたりしてはいけないのでしょうか。
いいえ、儲けてかまいません!事業を行うには資金が必要ですから、ボランティアでは事業が継続できません。
非営利 ⇒役員や会員などの構成員に利益を分配しないということ
もちろん事業ですから、事業収益を上げて、そこから諸経費や給料等の人件費を引き、その上で利益が残ったら、次の活動に使う資金にするということです。
後述する「NPO法人の要件」でも説明しますが、
- 株式会社などの営利法人 ⇒得た利益を出資者に分配することを目的としている
- NPO法人 ⇒得た利益を構成員や特定の個人・団体に分配するのではなく、社会貢献活動に充てることを目的としている
ですから、NPO法人であっても、モノを売ってかまいません。モノを売って利益が出たら、分配せずにNPO法人の掲げた目的を実現する活動資金に使えばいいのです。
収益が増えれば活動資金が増えます。活動資金が増えれば、さらに積極的に活動でき、社会貢献活動をいっそう発展させることができるといえます。
2.NPO法人のメリット
①社会的信用を得られる
NPO法人の設立には所轄庁から認証を受ける必要があります。また、NPO法人の一定の情報は、所轄庁や内閣府のポータルサイト上に公開されています。
このような、設立時の認証制度や情報公開制度があるため、社会的信頼が得られやすいといえます。
②税制上のメリットがある
NPO法人は、「法人税法上の収益事業」を、「継続して」、「事業所を設けて」営む場合に課税対象になります。
税法上の収益事業
(1)物品販売業 (2)不動産販売業 (3)金銭貸付業 (4)物品貸付業 (5)不動産貸付業 (6)製造業 (7)通信業 (8)運送業 (9)倉庫業 (10)請負業 (11)印刷業 (12)出版業 (13)写真業 (14)席貸業 (15)旅館業 (16)料理飲食業 (17)周旋業 (18)代理業 (19)仲立業 (20)問屋業 (21)鉱業 (22)土石採取業 (23)浴場業 (24)理容業 (25)美容業 (26)興行業 (27)遊技所業 (28)遊覧所業 (29)医療保健業 (30)技芸・学力教授業 (31)駐車場業 (32)信用保証業 (33)無体財産権の提供業 (34)労働者派遣業
行おうとしている事業がこれらにあてはまらず、収益事業とみなされない可能性もあります。気になる点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
税法上の収益事業を行っていない場合、法人住民税の均等割りについて、免除を受けることもできます。
③設立時の登録免許税がない
NPO法人の設立時費用として、登記の際の登録免許税がかかりません。株式会社や一般社団法人と比較上、メリットといえます。
3.NPO法人のデメリット
①毎年、事業報告を提出しなくてはならない
一番のデメリットは、事務が繁雑になることです。会社の場合、事業年度が終われば税務関係の処理をして終わりですが、NPO法人は所轄庁への「事業報告」を毎年行わなくてはなりません。
②変更があった場合の手続きが面倒
NPO法人の場合、何か変更があったときは所轄庁への届け出が必要になります。また、定款を変更する場合には、変更内容によって縦覧・審査を経て認証が必要なケースがあります。
③設立時のハードル-必要な人数が多い・時間がかかる
NPO法では、最低10人以上の社員を必要とするため、株式会社や一般社団法人と比較上ハードルが高くなります。後述の「NPO法人の要件」でも説明します。
また、NPO法人は設立するのに認証を受ける必要があります。認証を受けるまでの間には、縦覧期間や審査期間を経ますので、それだけ日数がかかります。ただし、近年の改正により、期間は共に改善されてきています。
4.NPO法人の人的要件
NPO法人の要件として、主に人に関する「人的要件」と、それ以外の「その他の要件」に分けられます。まずは、人的要件を確認します。
NPO法人を設立するにあたって、「理事」と「監事」と「社員」が必要になります。ちなみに、会社の従業員にあたる人のことを一般的に「職員」と呼びます。
役員とは
NPO法人の役員とは、理事と監事のことをいいます。理事は3人以上、監事は1人以上置かなくてはなりません。つまり、合計4人以上の役員が必要です。役員には、欠格事由や親族規定、報酬規定等があります。
理事とは
NPO法人の理事は、NPO法人の業務を執行したり、理事会を開催して意思決定を行ったりします。株式会社でいう、取締役のような立場にあたります。
監事とは
NPO法人の監事は、理事を監督したり、法人の財産状況を監査したりします。ですから、監事は理事を兼務できませんし、職員(社員は可)になることもできません。
社員とは
NPO法では、最低10人以上の社員が必要です。ここでいう社員とは、会社の従業員やスタッフといった社員の意味ではありません。
NPO法上の社員とは、総会で議決権を持つNPO法人の構成員のことをいいます。一般的には、正会員がNPO法上の社員にあたります。株式会社でいう株主のような存在です。
NPO法人設立には何人必要か
ここで、NPO法人の設立には結局、何人必要かおさらいします。
- 理事は3人以上、監事は1人以上 ⇒ 役員は4人以上必要
- 社員は10人以上必要
役員と社員を兼務することができます。ですから、役員4人を社員とすれば、あと6人のメンバーを集めれば、NPO法人設立の人数要件はクリアします。
5.NPO法人のその他の要件
①営利を目的としないこと
前述の「NPO法人とは」で、説明したように誤解を生みやすいので、もう一度整理しておきます。
活動によって得た利益を
- 構成員に分配することを目的とする ⇒営利
- 構成員に分配することを目的としない ⇒非営利
非営利とはボランティアではなく、活動の収益から、諸経費や給料等の人件費を差し引いて、利益が残ったら、その活動のために使うということです。収益はしっかりと上げていきましょう。
②宗教活動を主たる目的としないこと
宗教団体が法人格を取得するためには、NPO法人ではなく宗教法人法によって取得します。ですから、NPO法人では、宗教団体によるNPO法人の設立を禁止しています。
ただし、NPO法人のほとんどのメンバーを、ある宗教法人の信者が占めていたとしても、教義を広めることを目的としていないのであれば、NPO法人として設立可能です。
③政治を主たる目的としないこと
政治的な主義を推進・支持したり、政治的な主義主張に対して反対をすることなどを主な目的とすることはできません。
④特定の政党・政治家等への支援を主たる目的としないこと
特定の公職者や候補者を支援したり、または反対するなど、政治的な支持活動などを主な目的とすることはできません。
ただし、ある政治家の後援会がNPO法人を設立できないということではありません。たとえば、選挙区域の地域の発展のために勉強会を開催したり、地域活性化の活動を目的としてNPO法人を設立することは可能です。
⑤特定の個人・法人・団体の利益を目的として事業を行わないこと
NPO法人は、不特定多数の者の利益となることを目的としなくてはなりません。ですから、特定の個人などの利益を目的とすることはできません。
⑥特定非営利活動に支障が出るほど、その他の事業を行わないこと
NPO法人は本来の事業に加えて、「その他の事業」としてNPO法人の目的と関係のない事業を行うことができます。ただし、その他の事業から得た利益は、本来の事業のために使わなくてはなりません。
また、その他の事業は本来の事業に支障がない範囲で行う必要があります。その他の事業の事業費が、本来の事業を上回ってもいけません。
⑦暴力団ではないこと
NPO法で規制されており、暴力団、暴力団もしくは暴力団の構成員等の統制の下にある団体でないこと等が必要です。
⑧会計の原則を守る
NPO法人も会社と同じ法人格ですから、日々の取引を記帳し、会計書類を作成していかなくてはなりません。また、NPO法人は、「財産目録」、「貸借対照表」、「活動計算書」を作成し、所轄庁に提出する必要があります。
6.NPO法人を設立するまでの流れ
設立の準備から申請までの手順
まずは、申請が受理されるまでの流れを把握しましょう。
- 申請書類(案)の作成
- 事前相談に行く
- 設立総会の開催
- 申請書類の作成・最終確認
- 申請書類の提出
申請書の受理から認証・登記までの手順
続いて、申請書の受理から認証・登記までの流れを把握しましょう。
- 縦覧期間
- 審査期間
- 設立認証の決定
- 登記をする
- 登記完了届の提出
所轄庁から認証書が届いただけでは法人は成立していません。「登記事項証明書」を添付した上で、所轄庁に「設立登記完了届出書」を提出することでやっとNPO法人設立となります。
7.まとめ
NPO法人の基礎知識から設立までを解説してきました。NPO法人として、事業をお考えの方は、NPO法人設立までのスケジュールを考慮した計画策定が重要です。
NPO法人の特性を理解する方が増え、さらに事業が活性化されればうれしいかぎりです。そしてNPO法人の活動の輪が、いたるところに拡がっていくことを心から楽しみにしています!
NPO法人の設立をお考えの方へ、行政書士が申請を代行サポートさせていただきますのでお気軽にお問い合わせください。